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研究分野RESEARCHes

各部門・分野の最近の主要な研究は次のとおりです。

パルスパワー基盤部門

  • ワイドバンドギャップパワー半導体デバイスを用いた並列スイッチングモジュールの動作
    (パルスパワー発生制御分野,佐久川貴志 教授)
    10 parallel switching modules using wide band-gap semiconductor power devices

    本研究では、一次スイッチング回路用シリコンカーバイド系金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(SiC-MOSFET)として新世代のパワースイッチング半導体デバイスを用いて磁気パルス圧縮回路の磁性体の容積を減らした。 主スイッチングモジュールは6素子の並列ディスクリートSiC-MOSFETを使用。 モジュールの最大スイッチング電圧と電流はそれぞれ1200Vと1500A。 マルチ接続モジュールを開発し、10並列モジュール同期スイッチングに成功した。 パルス当たりの出力エネルギーは約10Jで、90nsの立ち上がり時間で50kVの出力電圧が得られた。 この電源装置は環境改善用やエキシマレーザ装置の励起電源としても利用できる。

    出典: Takashi Sakugawa, et al.: "Development of Parallel Switching Circuit Using Wide Band-Gap Semiconductor Power Devices", Proceedings of Euro-Asian Pulsed Power Conference 2016

  • 一方向多孔質(ユニポア)銅の機械的性質と微細組織
    (爆発プロセス分野,外本和幸 教授)

    UniPore samples with high (0.58), medium (0.49) and low (0.32) porosity (a) showing a distinctive circular arrangement of pores (b).

    本論文では、一方向にそろった銅の多孔質構造に関して、その微細組織と機械的性質について論じた。 そのユニークな製造法は、多数の銅パイプを爆発圧縮成形することによって作られる。 すなわち、爆薬の爆轟によって生じる高圧により、金属パイプ表面に爆発圧接の現象を生じさせて、均質なセル状の断面形状を形成させる。 接合表面同士の状況は横断面及び縦断面に対する金属組織観察によって解析された。 機械的性質に関しては、3つの異なる気孔率(0.32~0.58)のユニポア材に対して、評価を実施した。 ユニポア材の非等方性が準静的圧縮試験によって、穴の整列方向に対して横方向及び縦方向に対して評価された。 3点曲げ試験が、準静的及び動的荷重下で実施され、サーモグラフィーを用いて塑性領域および破断領域を可視化することも実施した。 それらの結果によると、各種幾何学的方向について調べた特性にはばらつきはほとんどないことが知られた。 さらに、大きなエネルギー吸収能を示す優れた圧縮特性が、いずれの圧縮方向に対しても見られた。 3点曲げ試験の結果は、特に動的圧縮の場合に有利な延性破壊を示すことが知られた。

    出典: Vesenjak, M., Hokamoto, K., Sakamoto, M., Nishi, T., Krstulovic-Opara, L., Ren, Z.: "Mechanical and microstructural analysis of unidirectional porous (UniPore) copper", Materials and Design 90, 867-880 (2016)

  • WC粉末粒子と金属板の高速衝突による被膜形成技術
    (爆発プロセス分野,田中 茂 助教)

    爆薬を用いると金属板を数km/sの速度で飛翔させることが出来ます。 これを硬質粉末粒子に衝突させると、衝突時の高圧力によって金属材料は流体のように粉末粒子間に流れ込んでいきます。 数値解析によって金属板の加速過程を予測し、衝突速度を1km/sとしたSUS304板とWC粉末粒子の組み合わせでは、母材金属表面にWC粒子と母材金属から成る被膜が形成され、母材金属の耐摩耗性が改善されました。 アルミニウムとダイヤモンド粉末の組み合わせでは、アルミニウム板の放熱特性の改善が確認されています。

    出典: S. Tanaka, A. Mori, H. Oda, D. Inao, K. Hokamoto: "Surface coating by tungsten carbide particles on a metal substrate by high velocity collision", Science and Technology of Energetic Materials, in print (2017)

極限物性科学部門

  • 超高速衝突に伴う応力波伝播および損傷形成・進展過程
    (衝撃超重力物質分野,川合伸明 准教授)

    図 (a-c), (e-g):ポリカーボネートターゲットにポリカーボネート球を秒速6キロメートルで衝突させた際の2方向同時超高速度撮影画像 (d),(h): 超高速衝突後のポリカーボネートターゲット

    超高速衝突破壊現象は、スペースデブリの宇宙機への衝突問題や、惑星形成・進化過程における天体衝突問題など、宇宙理工学において重要な現象である。 しかしながら、ごく短時間で現象が進行・終了することもあり、その損傷形成・進展機構は未だ不明な点が多い。 そこで当研究グループでは、超高速衝突現象の超高速度可視化により損傷形成過程を明らかにし、損傷形成機構を解明することを目指している。 右図はポリカーボネートのブロックにポリカーボネート球を秒速6キロメートルで衝突させた際の超高速度撮影画像であり、衝突に伴い生じた応力波の干渉により内部損傷が形成されていく過程を明瞭に捉えることに成功した。

    出典: N. Kawai, S. Zama, W. Takemoto, K. Moriguchi, K. Arai, S. Hasegawa, E. Sato: "Stress wave and damage propagation in transparent materials subjected to hypervelocity impact", Procedia Engineering 103, 287-293 (2015)

  • 超高速分光手法を用いた紅色細菌由来光合成アンテナ系における光保護機能の解明
    (極限物性物理分野,小澄大輔 准教授)

    図 (A) X線構造解析より得られた紅色細菌由来光合成集光アンテナ色素たんぱく複合体。(B)光保護作用の原理図。

    光合成光捕集アンテナ (図)は、効率的に太陽光を集めそのエネルギーを反応中心へと伝達する。 一方、生体系に過剰な光が供給されると活性酸素の発生が促進され生体組織を破壊する。 このため、光合成器官は過剰な光が供給された際に、生体組織を保護するため供給されたエネルギーを外部へ散逸させる機能を持つことが知られている。 本研究では、フェムト秒〜ミリ秒まで時間ギャップのない時間分解分光手法を開発し、紅色細菌由来の光捕集アンテナRhodobacter sphaeroides 2.4.1における光保護機能の解明を行った。 その結果、この光捕集アンテナは効率的に光を集光しエネルギー伝達を行うとともに、余剰な光を外部へと効率よく放出していることが明らかになった。

    出典: Daisuke Kosumi, Tomoko Horibe, Mitsuru Sugisaki, Richard J. Cogdell, Hideki Hashimoto: "Photoprotection Mechanism of Light-harvesting Antenna Complex from Purple Bacteria", Journal of Physical Chemistry B, vol. 120, pp. 951-956 (2016)

  • ARB加工により作製した超微細粒Tiの集合組織と疲労特性
    (極限材料科学分野,北原弘基 助教)

    上段: ARBにより作製した超微粒Ti板の透過電子顕微鏡(TEM)像である。 (a)板面方向, (b)板幅方向および(c)圧延方向から観察している。結晶粒径が1μm以下の超微細粒組織を有していることが分かる。 下段:超微細粒Ti板の疲労き裂進展プロファイルである。荷重軸をRD方向とTD方向に変化させた場合、集合組織の形成により、そのき裂伝播挙動が大きく異なることが分かる。 これは右に示す、すべり挙動の違いで説明ができる。

    本研究では、巨大ひずみ加工の一種であるARB(accumulative roll-bonding)を施した工業用純Tiの組織形態と集合組織が疲労特性に与える影響について検討を行った。 ARB-6サイクル材は、平均粒厚さ131nmの伸長組織と平均結晶粒径95nmの等軸粒組織が混在していた。集合組織を解析した結果、 ARB-6サイクル材は、c軸が板面から板幅方向(TD)に対し24度傾いており、圧延方向(RD)に[11-20]の方位を有する集合組織を形成していた。 疲労特性は、定応力試験とき裂進展試験により評価した。また、荷重軸方向は、TDとRD方向の二方向で行った。 TD荷重のき裂発生寿命はRD荷重より非常に長かったことから、集合組織はき裂発生寿命に大きく影響を与えることが分かった。 一方で、き裂進展挙動は、結晶粒の形状と集合組織の効果が相殺することで、荷重軸方向に依存しないことが明らかとなった。

    出典: H.Kitahara, S.Matsushita, M.Tsushida, S.Ando, N.Tsuji: "Fatigue Properties of ARB-Processed Ti Sheets with Crystallographic Texture", International Journal of Fatigue 92, 18-24 (2016)

  • スマートファクトリー実現によるイメージセンサの革新的生産技術開発
    (半導体極限機能科学分野,久保田 弘 教授)

    半導体イメージセンサは今や経済成長に不可欠な産業のコメとして、コトづくりの中核部品として発展し続けている。 現在世界シェアNo.1のソニーの生産子会社は10年後に生産能力を現在の10倍に増強する計画である。 イメージセンサ事業の産業競争力を増進するうえで浮かび上がった最重点課題は、ICTを融合したスマートファクトリー技術による1)白点キズの克服、2)革新的な省エネ技術の投入、の2点である。 1)については熊本大学発のPPCM計測で克服しつつある。 2)については熊本大学発の3次元気流シミュレーションによる多点温度湿度バーチャルメトロロジー法により、クリーンルームの循環空調機を完全に取り去るという非常識にも思える空調制御方式により、現在の2割の負荷エネルギーで量産設備を運用可能とする。 ソニー社内の資金(10億円以上)に加えてNEDO等の国の支援を受けて実施する計画である。

バイオエレクトリクス部門

  • コケ植物の葉緑体を覆うペプチドグリカン「壁」の証明
    (基礎バイオエレクトリクス分野,高野博嘉 教授)

    ヒメツリガネゴケのDdl遺伝子破壊ラインの巨大葉緑体形質をエチニル基が付加されたDA-DAで相補後、 クリック反応でペプチドグリカンを可視化した細胞の共焦点顕微鏡画像。 全ての葉緑体の自家蛍光(赤)の周りがペプチドグリカン(緑)で覆われている。

    緑色植物の光合成の場である葉緑体は二重の包膜のみで囲まれていると、どの教科書にも書いてありますが、 我々はコケ植物を用いて高感度なペプチドグリカン検出システムを使い、今まで電子顕微鏡でも観察できなかった、 葉緑体を覆うペプチドグリカン「壁」を可視化することに成功しました。 コケ植物における葉緑体の「壁」は、葉緑体の形態・分裂機構や光合成物質の輸送に関係するだけでなく、 植物の進化にも大きく関わっている可能性があります。当論文の発見は、教科書に載っている今までの一般的な葉緑体構造の記述について、 その変更を迫るものです。

    出典: Hirano, T., Tanidokoro, K., Shimizu, Y., Kawarabayasi, Y., Ohshima, T., Sato, M., Tadano, S., Ishikawa, H., Takio, S., Takechi, K. and Takano, H: "Moss chloroplasts are surrounded by a peptidoglycan wall containing D-amino acids", Plant Cell 28, 1521-1532 (2016)

  • 強電界パルスによって細胞内に惹起されるイオン輸送
    (応用バイオエレクトリクス分野,勝木淳 教授)

    パルス印加後100 ms以内に起こるHeLa細胞内Ca輸送。現象はパルス条件に強く依存する。緑:Caイオン,青:核,赤:小胞体。

    強電界パルスは,誘電物質の集合体である生体に瞬間的に物理的な強い力として作用し,構造や環境に可逆的または不可逆的な変化をもたらします。 その結果として多様な生体応答が誘導されます。この作用はパルス条件に強く依存します。 右図は強電界パルス印加直後に細胞内で起こるイオン輸送です。 (a)はパルス印加30 ms後の細胞内Caイオン分布,(b)(c)(d)における紫および赤色はそれぞれ核および小胞体を示し,緑色はCaイオン濃度の増加分を表します。 通常,細胞質基質におけるCaイオン濃度は低く抑えられていますが,パルス印加直後に急激に増加します。 そのメカニズムはパルス条件に依存し,10 μs幅のパルスでは膜を通した細胞外からの流入,20 ns幅のパルスでは小胞体からの放出,500 ns幅ではその両方が起こります。 細胞内Caイオン濃度の変化は多様な生体反応のトリガー信号となることから,私たちはパルスを用いて特定の細胞応答を積極的に誘導することを試みています。

    出典: N. Onishi, K. Honda, T. Nagahisa, S. Katsuki: "Variation of intracellular Ca2+ and Na+ mobilizations in HeLa cells initiated by nanosecond and microsecond electrical pulses", submitted to BBA

  • ナノ秒パルス高電界が細胞内に誘発するタンパク質架橋の発見
    (医療バイオエレクトリクス分野,矢野憲一 教授)

    図: 上段:ナノ秒パルス高電界によるタンパク質架橋誘導のモデル。細胞をナノ秒パルス高電界で処理するとカルシウム流入とトランスグルタミナーゼ(TG)の活性化が誘発され、多数の細胞内タンパク質が架橋される。 下段:ナノ秒パルス高電界処理した細胞(右)と無処理細胞(左)の顕微鏡像。緑: 架橋されたタンパク質、赤: 微小管、青: DNA

    ナノ秒パルス高電界には、細胞の生存率低下や腫瘍形成の抑制といった作用があることから新しい癌治療法として期待されています。 私達はナノ秒パルス高電界をガン細胞に作用させると、細胞内の様々なタンパク質が強く架橋されることを見出しました。 特定遺伝子の働きを抑える手法(RNA干渉法)を利用して、この現象のメカニズムを解明しました(図を参照)。 こういった架橋反応は、タンパク質の正常な機能を妨げ、アルツハイマー病などの進行に関与しますが、ナノ秒パルス高電界によっても同様の反応が生じ細胞に機能障害をもたらします。 私達の発見はナノ秒パルス高電界が既存の癌治療法とは異なるユニークな作用機序を持つことを示しています。

    出典: K. Morotomi-Yano and K. Yano: "Calcium-dependent activation of transglutaminase 2 by nanosecond pulsed electric fields", FEBS Open Bio 7, 934-943 (2017)

  • テラノスティックマイクロバブル: マイクロストリーミングによる修復可能な細胞操作
    (衝撃波バイオエレクトリクス分野,ホセイニ 教授)
    Wireframe style surface plot of the cell membrane deformation and its schematic diagram showing sonoporation mechanism: (a) Cell membrane before the interaction. (b) Overstretched lipid bilayer with submicro/nano pores (red arrows) and damaged underlying cell cortex during the microstreaming shear stress pulling of the membrane.

    低強度超音波とカプセル化されたマイクロバブルとの組み合わせは、細胞膜の透過性を変えることができ、非侵襲的遺伝子/薬物送達の有望なセラノスティック技術を提供する。 その大きな可能性にもかかわらず、細胞レベルでの送達の生物物理学的メカニズムはあまり理解されていないままである。 ここでは、ヒトリンパ腫細胞と微小気泡相互作用ダイナミクスの最初の直接高速マイクロ写真画像が、完全に自由な懸濁液中で提供される。 私たちのリアルタイム画像と理論的解析は、マイクロバブルの双極マイクロ流路の負の発散側が局所的に細胞膜を引っ張り、細胞膜に一過性の局部的突起を引き起こすことを証明しています。 pEGFP-N1で陽性にトランスフェクトされた細胞は、相互作用が細胞破壊なしに膜ポレーションを引き起こすことを確認する。 結果は、過剰伸長細胞膜が修復可能なサブミクロン孔形成を引き起こし、マイクロストリーミングソノポレーション機構の主要な証拠を提供することを示す。

    出典: S. Moosavi Nejad, Hamid Hosseini, Hidenori Akiyama, Katsuro Tachibana: "Reparable Cell Sonoporation in Suspension: Theranostic Potential of Microbubble", Theranostics Vol. 6(4), pp. 446-455 (2016) doi: 10.7150/thno.13518

国際連携客員部門

  • A new mechanism for efficient hydrocarbon extraction from colonial microalgae
    (バイオエレクトリクス分野,グイヨネ 特別研究員)
    Botryococcus braunii var Kuetzing observation under fluorescence microscopy. Nile red (0.15mg/mL) is used to stain lipids (green) and periodic acid (10%) is used with propedium iodide (1mg/mL) as Schiff reagent to stain polysaccharide (yellow and red).

    Real-time microscopic observation before, during and after treatment (x40).

    Extracting hydrocarbons from microalgae at low energy cost is imperative for biodiesel mass production as a renewable energy source. Botryococcus braunii produce large amount of hydrocarbon, as such it is a good candidate for milking. A nsPEF (duration about 250ns, Electric field near 90kV/cm) was used successfully to induce oil extraction phenomenon. A variety of shot numbers were applied to determine how many shots are need and energy requirement. This study uses real time and fluorescence microscopic observation to visualize algae behavior during and after nsPEF treatment and to elucidate the oil extraction phenomenon. Our study shows that oil is extracted from the extracellular matrix rather than from inside cells. nsPEF induce separation between cells and matrix, allowing hydrocarbon harvesting. This study suggests that oil can be extract from Botryococcus braunii colony easily, quickly and at a low energy cost using nsPEF. Additionally, as some cells were found to survive the oil extraction, nsPEF might be adaptable as a nondestructive, continuous extraction.

    出典: Guionet, A., Hosseini, B., Teissie, J., Akiyama, H., Hosseini, H.: "A new mechanism for efficient hydrocarbon electro-extraction from Botryococcus braunii", Biotechnology for Biofuels Vol. 10 (1), 39 (2017)