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パルスパワーってなに?What's Pulsed Power?

  • パルスパワーとは

    まず,電力(単位はW)と電気エネルギー(単位はJまたはWs)の違いを理解しておかなければなりません。 電気エネルギーは電力量と呼ばれる場合もあります。電気エネルギーは(電力)x(時間)です。 電気エネルギーは,短時間であれば,貯めたり吐き出したりすることができます。

    次に,下の図を使ってパルスパワーの説明をします。例えば,100 Wの電灯を10 秒点けるとします。 この時に使われる電気エネルギーは100 W x 10 s = 1000 J となります。 このエネルギーを,使わずにコンデンサなどの電気を貯められる容器に一旦入れ,その後「瞬間」にエネルギー全てを使い切るとします。 仮に,瞬間の時間が10 ns(1億分の1秒)であるとすれば,このときの瞬時電力は100,000,000,000 Wになります。 これは,日本全体で使われている全電力に匹敵します。この極めて短い時間に発生する巨大電力を「パルスパワー」といいます。

    図1 パルスパワー(時間スケールで見たもの)

    上の例では,電気エネルギーのパルスパワーの話をしましたが,電気に限らず,力学エネルギー,化学エネルギー,光エネルギーも同様にパルスパワーとして利用可能です。

    実は,私たちはパルスパワーを日常的に使い,目にしています。 例えば,金槌で釘を柱に打ち込む行為。 指で押し続けても釘は柱に入っていきませんが,金槌を振りおろして釘頭を叩くと,その瞬間に釘は柱にぐいっと食い込んでいきます。 この場合,振りおろすことによって金槌頭に運動エネルギーが蓄積され,釘頭に衝突する一瞬の間に金槌頭の運動エネルギーが放出され大きな力を生まれます。 これが尖った釘先に伝わって大きな圧力になり,柱の繊維を引き裂きながら入っていきます。まさにパルスパワーです。 図3の鉄砲では,火薬という化学エネルギーが一瞬のうちに爆発的に放出されて高圧にかわり,これが弾を押し出します。 他にも,似たようなことは身の回りでたくさん見つけることができます。

    図2 金槌で釘を叩き込む
    図3 鉄砲

    以上述べたように,エネルギーを時間的に,場合によっては空間的に圧縮して得られる大電力や大電力密度は, 多様な物質に(超高圧,超高温,非平衡などの)極限的な環境を提供します。

    パルスパワー科学研究所では,パルスパワーを発生させる技術,パルスパワーで発生した極限環境に関する科学, さらには,これらを産業技術として応用するための研究を推進しています。