パルスパワー科学研究所 医療バイオエレクトリクス分野 矢野研究室

(共用棟黒髪3、4階、内線 3965、E-mail: yanoken@kumamoto-u.ac.jp)


私達はパルスパワーの医療応用に向けた基礎研究を行っています。これまでにパルスパワー科学の分野に分子生物学の最新手法を導入することによって、世界初となる重要かつオリジナリティーの高い発見をいくつもなしとげてきました。私達の研究室ではパルスパワーの医療応用の基礎研究に取り組んでくれる方を募集しています。

取り組んでくれる学生を募集している研究テーマ

・パルス幅可変を可能にする新しいパルス高電界発生装置の評価と生命科学研究への応用
・遺伝子工学で作製された生体センサーを利用したパルスパワー誘導性生体応答の解析


詳細はここを参照ください


現在進行中の研究テーマ

・ナノ秒パルス高電界によるヒト免疫反応の活性化
私達は実験条件下でヒト由来培養細胞を免疫細胞へと分化させ、そこにパルスパワーを作用させる実験系を確立しました。その結果、ナノ秒パルス高電界が免疫反応を活性化することを発見しました。従来、免疫反応は病原菌や薬物によってしか引き起こすことができませんでしたが、ナノ秒パルス高電界という「クリーン」な手法により免疫反応を活性化できれば、基礎研究や医療応用に広く役立つことが期待されます。(理学部 斉藤寿仁教授との共同研究)

・ナノ秒パルス高電界によるタンパク質架橋の誘導メカニズム
アルツハイマー病やハンチントン病といた神経変性疾患では、タンパク質の架橋反応が過剰に起こっており、それが病態を悪化させることが知られています。私達はナノ秒パルス高電界をヒト癌細胞に作用させると、神経変性疾患ときわめてよく似たタンパク質架橋が強く誘発されることを世界で初めて見出しました。またこの現象に関わる遺伝子をRNA干渉法という手法で同定することに成功しました。以上の新発見はこれまで全く予想されておらず、パルスパワーの生体作用の全容解明に大きく貢献すると考えられます。

・UVパルスレーザーによる部位特異的なDNA損傷誘導を利用したDNA損傷応答機構のライブイメージング解析
DNA損傷は最も重篤な細胞ダメージであり、それによって誘発される生体応答の解明は、癌化の基礎研究と癌治療の双方に重要です。私達の研究室ではヒト細胞中の狙ったところにUVパルスレーザーを当ててDNA損傷を誘発する手法を確立しました。この手法と最先端のライブイメージング解析を組み合わせることで、これまで知られていなかった遺伝子がDNA損傷応答に関わることを明らかにしつつあります。(横浜市立大学 足立典隆教授との共同研究、パルスパワー科学研究所共同研究課題)

・プラズマ誘導性細胞応答における電荷の生理的意義の解析
東北大学流体科学研究所 佐藤岳彦教授との共同研究として、プラズマに対するヒト細胞の応答機構の分子生物学的な研究を開始しました。(パルスパワー科学研究所共同研究課題)


私達がこれまでに明らかにしてきたこと

私達はパルスパワー科学の分野に最新の分子生物学を導入することで、きわめてオリジナリティーの高い研究成果を挙げてきました。もちろん、どれも世界で初めての発見です。こういった一連の研究から、ナノ秒パルス高電界に対する細胞応答は処理強度に応じて異なることを、分子レベルの証拠と共に世界で初めて提案してきました。





・ナノ秒パルス高電界による細胞死メカニズムの解明
ナノ秒パルス高電界がガン細胞に死をもたらすことは知られていましたが、そのメカニズムについては誤った考え方や不明な点が多々あり、ナノ秒パルス高電界の医療応用への大きな妨げとなっていました。私達はほぼ全ての固形腫瘍由来細胞において、ポリADPリボース形成という化学反応を伴った細胞死が生じることを世界で初めて証明し、ナノ秒パルス高電界がこの化学反応と細胞死を引き起こすために必要な諸条件を決定してきました。この一連の新発見はナノ秒パルス高電界を利用したガン治療の効率化や副作用低減の基盤となる重要な成果です。




・ナノ秒パルス高電界が生体ストレスであることの証明
生体に悪い影響を及ぼす外部刺激や外部環境は「ストレス」と呼ばれています。生物学的に「ストレス」はタンパク質合成の遮断を伴う反応として定義されています。生体はストレスにさらされるとタンパク質合成を遮断することでエネルギーを節約し、ストレスが通り過ぎるのを待ちます。この反応をストレス応答と呼びます。私達はナノ秒パルス高電界がタンパク質合成の遮断を引き起こすことを世界で初めて示しました。さらにそこに至る細胞内のシグナル伝達経路をノックアウトマウスなどを使い解明しました。この一連の発見はナノ秒パルス高電界が生体ストレスであることを証明したもので、世界的に高い評価を受けてきました。




・ヒト細胞が微弱なナノ秒パルス高電界であっても感知・応答できることの証明
私達は弱いナノ秒パルス高電界をヒト細胞に作用させ、そのときに生じる一連の化学反応や遺伝子発現の変化を解析しました。その結果、たとえ細胞の形態変化や生存・増殖といった、はっきりとした影響が出ないような弱いナノ秒パルス高電界であっても、ヒト細胞はそれを認識して応答することができることを証明しました。