Yano Lab 矢野憲一研究室

熊本大学 パルスパワー科学研究所
医療バイオエレクトリクス分野
矢野研究室


私達はパルスパワーの医療応用に向けた基礎研究を行っています。これまでにパルスパワー科学の分野に分子生物学の最新手法を導入することによって、世界初となる重要かつオリジナリティーの高い発見をいくつもなしとげてきました。(私達の研究成果が熊本大学からプレスリリースされました! リンクはこちら

2019年4月より情報電気工学科の卒研生を受け入れることができるようになりました

従来、大学院修士課程の学生を受け入れてきましたが、2019年4月から卒研生も受入可能となりました。電気工学技術の医療応用に興味のある学部四年生の方々をお待ちしています。

研究室での様々な活動はパルスパワー関連のグループ(佐久川先生、勝木先生、ホサノ先生、浪平先生、王先生)と共同で行います。

研究室見学

日時 4月1日 (月) 14:40 → 15:00から1時間弱
   4月2日 (火) 13:00から1時間弱
場所 共用棟黒髪3、5階、516号室

それ以外の時間帯は共用棟黒髪3、4階、411号室にて随時受け付けます。


取り組んでくれる学生を募集している研究テーマ

1. ナノ秒パルス高電界の抗腫瘍作用に関する研究

私達は実験室内でガン細胞から腫瘍を形成させる手法を確立しました。これにナノ秒パルス高電界を作用させることでガン治療のモデル研究を行い、ガン治療に適したナノ秒パルス高電界処理の条件を探ります。またナノ秒パルス高電界が抗腫瘍作用を示す分子メカニズムについて明らかにします。

2. ナノ秒パルス高電界のガン転移抑制作用に関する研究

正常細胞と異なり、ガン細胞は活発に移動するため、体内では発生部位から他の場所へと移動(転移)します。私達はガン細胞の転移する能力を測定する実験系を確立しました。この実験系を用いて、ナノ秒パルス高電界がガン転移を抑制するための処理条件を決定すると共に、ガン転移抑制の分子メカニズムについて明らかにします。

上記のガン治療に関する研究テーマに加えて以下の研究テーマも可能です。

・ナノ秒パルス高電界によるヒト免疫反応の活性化機構

私達は実験条件下で免疫細胞の一種である好中球を作り出す実験系を確立しました。この細胞にナノ秒パルス高電界を作用させると免疫反応が活性化されることを発見しました。従来、免疫反応は病原菌や薬物によってしか引き起こすことができませんでしたが、ナノ秒パルス高電界という「クリーン」な手法により免疫反応を活性化できれば、基礎研究や医療応用に広く役立つことが期待されます。(理学部 斉藤寿仁教授との共同研究)

・パルス幅可変を可能にする新しいパルス高電界発生装置の評価と生命科学研究への応用

パルス高電界はパルス幅に応じて生体作用が異なることが知られています。私達は異なるパルス幅の高電界を細胞に作用させて、顕微鏡でモニターするための装置を作製しました。この装置を使用することで、同一プラットフォーム上で異なるパルス幅のパルス高電界を作用させて、生体作用への影響を解析します。


私達がこれまでに明らかにしてきたこと

私達はパルスパワー科学の分野に最新の分子生物学を導入することで、きわめてオリジナリティーの高い研究成果を挙げてきました。もちろん、どれも世界で初めての発見です。

・UVパルスレーザーによる部位特異的なDNA損傷誘導を利用したDNA損傷応答機構のライブイメージング解析(熊本大学からプレスリリースされました! リンクはこちら

DNA損傷は最も重篤な細胞ダメージであり、それによって誘発される生体応答の解明は、癌化の基礎研究と癌治療の双方に重要です。私達の研究室ではヒト細胞中の狙ったところにUVパルスレーザーを当ててDNA損傷を誘発する手法を確立しました。この手法と最先端のライブイメージング解析を組み合わせることで、これまで知られていなかった遺伝子がDNA損傷応答に関わることを明らかにしつつあります。(横浜市立大学 足立典隆教授との共同研究、パルスパワー科学研究所共同研究課題)

・プラズマ誘導性細胞応答における電荷の生理的意義の解析

東北大学流体科学研究所 佐藤岳彦教授との共同研究として、プラズマに対するヒト細胞の応答機構の分子生物学的な研究を行っています。プラズマの生体作用は活性種と電界の相乗効果によりますが、そのうち電界による処理を最適化すると、細胞の運動能が強まることを明らかにしました。皮膚などに生じた傷に対してプラズマ処理を行うと、治癒が促進することが知られていますが、その分子メカニズムの解明につながる発見と言えます。(パルスパワー科学研究所共同研究課題)

・ナノ秒パルス高電界によるタンパク質架橋の誘導メカニズム

アルツハイマー病やハンチントン病といた神経変性疾患では、タンパク質の架橋反応が過剰に起こっており、それが病態を悪化させることが知られています。私達はナノ秒パルス高電界をヒト癌細胞に作用させると、神経変性疾患ときわめてよく似たタンパク質架橋が強く誘発されることを世界で初めて見出しました。またこの現象に関わる遺伝子をRNA干渉法という手法で同定することに成功しました。以上の新発見はこれまで全く予想されておらず、パルスパワーの生体作用の全容解明に大きく貢献すると考えられます。

・ナノ秒パルス高電界による細胞死メカニズムの解明

ナノ秒パルス高電界がガン細胞に死をもたらすことは知られていましたが、そのメカニズムについては誤った考え方や不明な点が多々あり、ナノ秒パルス高電界の医療応用への大きな妨げとなっていました。私達はほぼ全ての固形腫瘍由来細胞において、ポリADPリボース形成という化学反応を伴った細胞死が生じることを世界で初めて証明し、ナノ秒パルス高電界がこの化学反応と細胞死を引き起こすために必要な諸条件を決定してきました。この一連の新発見はナノ秒パルス高電界を利用したガン治療の効率化や副作用低減の基盤となる重要な成果です。

ナノ秒パルスによる細胞死


・ナノ秒パルス高電界が生体ストレスであることの証明

生体に悪い影響を及ぼす外部刺激や外部環境は「ストレス」と呼ばれています。生物学的に「ストレス」はタンパク質合成の遮断を伴う反応として定義されています。生体はストレスにさらされるとタンパク質合成を遮断することでエネルギーを節約し、ストレスが通り過ぎるのを待ちます。この反応をストレス応答と呼びます。私達はナノ秒パルス高電界がタンパク質合成の遮断を引き起こすことを世界で初めて示しました。さらにそこに至る細胞内のシグナル伝達経路をノックアウトマウスなどを使い解明しました。この一連の発見はナノ秒パルス高電界が生体ストレスであることを証明したもので、世界的に高い評価を受けてきました。

ナノ秒パルスによるストレス応答


・ヒト細胞が微弱なナノ秒パルス高電界であっても感知・応答できることの証明

私達は弱いナノ秒パルス高電界をヒト細胞に作用させ、そのときに生じる一連の化学反応や遺伝子発現の変化を解析しました。その結果、たとえ細胞の形態変化や生存・増殖といった、はっきりとした影響が出ないような弱いナノ秒パルス高電界であっても、ヒト細胞はそれを認識して応答することができることを証明しました。

ナノ秒パルスによるシグナル伝達経路の活性化
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